4/8 きりん組のせんせい

新年度になったので、くまの保育園の担任の先生が変わった。担任の先生がふたり居て(子どもの年齢によって先生の数が変わる)、毎年ひとりは持ち上がりで、2年は同じ先生という流れで今まで来ていたので、S先生が担任かな~安心だぞ~!!と思っていたら、持ち上がりになってたのはもうひとりのM先生だった。M先生は今年でくまたちのクラスを受け持つのは3年目になる。(M先生はいっそ来年年長さんになるし最後まで担任でお願いしたい)M先生も良い先生なので問題ないのだけど、3年連続なんてあるんだなと思いながらも、S先生が居ないことがショックだった。私はS先生のことがめちゃくちゃ好きだった。

 

S先生はたぶん30代で、ショートカットで、ちょっと声が大きくて、いつも元気で、かわいいピンクのマウンテンバイクに乗っている。S先生のことをやばいやり手のすげー先生が来た……………!と思ったのは5月の保護者懇談会のときだった。

 

S先生はこの一年のクラスの目標として「きれいに食べることや、服を着替えられるようになることなど、自分の身の回りのことが自分でできるようにしていきたいと思います。だんだん大きくなると、友達同士で『○○ができてない』とか、言い合うようになっていきます。そうすると、言われた子は自信をなくしてしまうこともあります。今は先生たちやお父さんお母さんの大人の目が届きますが、いつか届かなくなる日が来ます。だから、自分の身の回りのことをきちんとできるようになって、自信をつけてほしいです」みたいなことを話していた。
身の回りのことで友達に言われて自信をなくす………!!というのがまず目から鱗で(少しずつできるようになれば大丈夫、くらいの緩い気持ちだった)、しかもそう遠くない未来で助けられなくなる日のことにも触れていて、順序よく組み立てて話をしているところがとても印象的だった。感情で話すタイプじゃない……論理的だし確実に気持ちの伝え方の近道を知っている話し方だ…………やり手だ………と思った。

 

それから、一年を過ごした。思い返すと、先生は子どもへの接し方がとても上手だった。否定なんて絶対しなかった。いつも子どもの気持ちをできるだけ汲み取った話し方をしていた。先生が感情的になってしまうところも想像できなかった。使う言葉がいつも前向きだった。他のお父さんお母さんにもそうだったと思うけど、私がくまの家での面白いエピソードや悩みごとを話すと、とっても丁寧に話を聞いてくれた。いろんなものを肯定しているように見えた。話をしていると、ぐちゃぐちゃに混ざった言葉と気持ちをひとつひとつばらばらにして、シンプルな形にしてもらえる感覚があった。

 

生活をしていれば、きっと先生の丁寧さや肯定の気持ちが踏みにじられることだってあるかもしれない。ぐちゃぐちゃにされたとき、どうやって立ち直ってるのかがずっと知りたいと思っている。

 

他にも印象的だったのは、S先生とM先生は運動会や遠足のときはお揃いのきりんのTシャツを着ていたことだ。運動会のとき、他のクラスの先生たちはお揃いのTシャツは着ていたけれど、クラスの名前になってる動物のシャツを着ていたのはうちのクラスだけだった。(きりんのTシャツ、先生たちわざわざ探したのかなあ、かわいいなあ、とネットで探しまくったけど同じやつは見つからなかった。きりんのTシャツはめちゃくちゃ種類があってびびった)

ときどき保育園に貼り出される集合写真、S先生はいつも子どもたちより楽しそうに笑っていた。先生も楽しい方が子どもたちもうれしいよね、とほっこりした気持ちになったし、子供たちとのいまを全力で楽しんでくれている気がした。

 

他にもいろんなエピソードがあるけれど、思い出すことひとつひとつが、いつも子どもたちへの愛でいっぱいだった。とっても素敵な先生だった。辛いことがあったとき、ときどき先生だったらどう考えてどう向き合うだろうって思うくらい。先生、ありがとうございました。もっと先生がくまとどんな風に接していくのか、先生が見たくまのことを私に教えてほしかったです。
色んなことが乱雑になってきたときは、先生のことを思い出して、ひとつひとつ丁寧にやっていこう。

 

そんなことを思いながら、私は新しい先生が連絡帳に書いてくれた「くまちゃん、お誕生日おめでとうございます!フルーツケーキとショートケーキを食べたと話してくれました」の返事を忘れずに書いた。

 

「くまはフルーツケーキは食べていません!(笑)ショートケーキは苺だけ食べてスポンジは冷蔵庫で眠っています!どこで食べてきたのか聞いたらひみつらしいので、追求はしませんでした…………!笑」