優しくされたかった話

元に戻りたくてしょうがなかったんだと思う。自分の気持ちを管理職に伝えて、管理職から当該の人(Aさんとする)に話がいって、Aさんはなにも話すことはありませんと言い、話し合いの場を設けることもしようとせず、事務所の空気がちょっとおかしくなり、管理職にもう一度話をするタイミングを一日中伺いまくって。今まで私が言わなかったからなんだけど、こんなことなかったから、落ち着かなかったんだと思う。だから、いつも通りに、元に戻したくてしょうがなかった。

 

私が管理職へ話し、管理職からAさんへの話があってから1日目はAさんから謝られて(こちらに口を挟ませる間も与えないような雰囲気だった)、それ以降は特に話さなかった。2日目は用があったのでAさんにこちらから話しかけたところ、相手側からも話しかけてくれるようになったので、それ以来今のところ(4日しか経過していないが)普通に会話をしている。なんとなく、お互い地雷を踏まないように。だけどそれくらいの距離感の方が、わたしはいいかなと思っている。うまくやれる気がしている。いつまで続くかわからないけど。

 

転機だったなと思うのは3日目に管理職をもう一度呼び出して、今後の方針を伝えたけれど、その話し合いがショックなものだったので、別の管理職(Bさんとする)に泣きながら電話をしたことだったと思う。

 

管理職を呼び出したのは、私がAさんにきつく当たられていたのは、私がAさんとコミュニケーションがうまくいかず話をしたくなくて、聞き流したりしているのが、またAさんとしては嫌だったのかな、だからまたきつく当たって、のループだったんじゃないかと思ったので、私の改善点としては、もう少し丁寧に接してみるということと、管理職に呼ばれて話をされたこともかなり本人のプライドを傷つけてしまっている気がするから、今後何かあれば私から直接話をするほうがいいのかもしれない、という話をしたかったからだった。管理職はだいたい同意してくれたのだけど、管理職とAさんと話し合いをした時に、Aさんから「こういう話し合いの場で自分の意見を伝えてうまくいったことがないから言いたくない」という言葉があったそうで、管理職はそのことを「Aさんにもそういう苦い経験があったから」と苦い経験として尊重しているところがどうしてもゆるせなかった。私は思いの丈をぶつけて話をしたのに、苦い経験があったからという思いで言わないAさんと同じように並べられている気がして、ゆるせなかった。ステージに上がってこない、逃げてるだけの人に居場所があることがゆるせなくて、かなしくなった。管理職はAさんに対して、話をしないと信頼関係も作れないし、子どもに関わる場所で働いてる以上子どもにも何かあったら話してねって言ってる中で大人は話さないっていうのはそれは違うということは伝えたと言っていたけれど、なんとなく言葉が入ってこなくて、ただただゆるせない気持ちでいっぱいになってしまった。

 

管理職を呼び出していたところをBさんが見ていて、なにかあったの?と声をかけてくれた。今後の方針を伝えたんですけど、詳細はラインで10000字で書いて送りますねと伝えたら電話にしてと言われたので、自宅に帰ってから電話で話すことになった。Bさんにはめそめそと泣きながら電話をすることが過去に何度かある

帰宅途中もゆるせないの気持ちでいっぱいになって、わたしはなにを満たそうとしているんだろうと思った。仕事を通して、自分の積み上げたものを使って、なにをしたいんだろう。もしかしたらなにもしたくなくて、わたしは実はからっぽで、ただ好きではない他人の山を踏み潰したいだけなのかもしれない。

 

電話をした。どこまで知っているかわからなかったので、まずどこまで報告として受けているかを確認し(ここまでが公式でここからオフレコで!みたいな)、経緯を説明した。やっぱり苦い経験として尊重されている、という話題になると涙が出てしまった。Bさんはただひたすらやさしく慰めてくれて、そうか、私に必要だったのは私がわたしを慰めることだったんだと気づいた。わたし、やさしくされたかったんだなあ。私が話したことは無駄だったんでしょうかなんだか私の独り相撲みたいだし、もうやっていけるかわかりません私大丈夫なんですかね、認められたいみたいな気持ちが強すぎて……自意識が強すぎるんですかね………修行に出た方がいいんでしょうか………とかいちいち言う度に繰り返し何度も私のいいところの話をしてくれてやさしかった。電話に出た時も明るく出てくれるから聞いてる人もきっと安心して話してくれてるんじゃないかなとか、いっつもなんでも真正面から取り組んでくれてるよとか、大丈夫だよって言ってくれて、ぶわーーーーっと憑き物が落ちていくみたいに喋って泣いた。淡々と処理を進めていくことも大切だったけど、自分が大怪我をしていたことに気づかなかったし、私がまずわたしに優しくすることが必要だったんだと思った。管理職を呼び出して話を聞いてもらうこと、Aさんにそれを伝えてもらうこと、問題に向き合うこと、それだけでも本当に大変だし傷つくし悩むししんどかったね、お疲れ様、大丈夫だよって言ってあげればよかったんだ。それだけでよかったんだな。

それから、慌ててたんだなということにようやく気付いた。急にポジティブになったりネガティブになったりする私の話を聞いて焦らずに、と言われて気づいた。焦ってたんだ。元の生活に戻したくて、早く答えを出したくてしょうがなかった。「元気にならなければならない」と思い込んで、そうなるための努力ばかりしていたけど、「元気でないわたしも共に生きていく」ためのことを考えるほうがいいんだと思う。どんなわたしもひとりも取りこぼさずに、生きていく方法を考えた方がいい。帰ってきてからも仕事のことばかり考えてしまう自分のことも嫌だったんだけど、それもわたしなんだから、いいよって私が言ってあげればよかったんだな。なにもしない自分のことも責めていたけど、別になにもしなくったっていいんだな。

 

しばらくは慌てずゆっくり過ごそうと思う。いつか、この経験が糧になる日がきますように。