デビューライブ且つ解散ライブに参加したはなし

Twitterで300人の吹奏楽経験者と、100人の初心者の400人で合奏するブラスジャンボリーというイベントを見つけたので行ってきた。私は鍵盤楽器以外に触れた経験がなく、中学の頃吹奏楽部に入りたかったのだけど吹奏楽部はなかったし、高校はあったけれど母親に「え〜中学からやってきた子らばっかりちゃう?」と言われて確かにな………と納得したため、吹奏楽部に入ることはなかった。(もし私が親の言うことを聞かないタイプの子どもだったらおそらく吹奏楽部に入っていただろう)けれど、吹奏楽部や合奏への憧れをなんとなく捨てきれていなかったようで、この初心者コースだったら参加できるのでは……??と思い、2〜3日悩んだ末に申し込んだ。初心者コースは2〜3時間インストラクターの方から指導を受けて、リハーサルをして、コンサートの本番に臨むという内容で、4500円するし、1人で参加することになるし、未知の世界だし、そもそもできるのか……?と思ったけれど、他の楽器に触れてみたかったし、なかなかこんな機会もないし、なによりわくわくしたので、そのわくわくに賭けてみた。あんまり見通しがきかない新しいことをするのが得意ではないのだけど、今回はそれに賭けてみたかった。トランペット、サックス、フルート、クラリネットの中からひとつ選んで申し込むのだけど、初心者コースで演奏するのはミッキーマウスマーチだったので、マーチだしトランペットがいいな〜〜!と思いトランペットを選んだ。結果として行ってきてめちゃくちゃよかった!!!サイコー!!!!!また今度見つけたら絶対行く!!!!!!撮ってもらった写真も加工してラインのアイコンにしちゃう!!!!!くらい浮かれてしまったんだけど、(ライン繋がってる人はアイコン見て欲しい)、音楽はやっぱりたのしい。

 

当日受付からレッスンがスタートするまで2時間くらいあって、結局何時に行けばいいのかもよくわからず、お昼も食べたいけど、あんまり行ったことのない地域だし食べたいお店いろいろ探してるけど辿り着けないかもしれないし…………と調べれば調べるほど、考えれば考えるほど疲れてしまい、始まる前から疲れてどないすんねん!!!!と思ったので11時ごろに着いて、そこからどうするかはまた到着してから決めることにした。目的地のそばに調べて目をつけていたカフェがあったのでそこに入った。カウンターに通されて、その席は目の前でお姉さんがピザを窯で焼いていたのでじっと見ながら料理が来るのを待った。ピザ、頼まなかったけどおいしそうだなあ…………。休日のおしゃれなカフェでひとりランチ最高〜〜!!!!と思ったし、次は友達と来たいな。 

とりあえず受付を済ませた方がいいのかな、と思ったので早々にカフェから出て受付をしたけど始まるまで時間があるからまた時間になったら戻ってきてくださいと言われ、だけどうろうろして迷うのも嫌なので、会場の前に何人の人が座っていたので同じように座って本を読んだ。原田マハさんの「さいはての彼女」、ずっと買って置きっぱなしにしていたのでようやく読めた。そんなに寒くもなかったのでゆっくり読めた。外で読む本ってすばらしいなあ。

 

時間になったので建物の中に戻り、レッスンが始まった。老若男女問わず参加してるような感じで、参加したいという意思だけあれば他は何も問われていない感じがとてもよかった。すごく雰囲気のあるホールでのレッスンで、インストラクターのお姉さんがめちゃくちゃかわいい………と思っていたのもつかの間、トランペット、まっっっったく音が出せない。歯を開けて唇を閉じて少しだけ息を出して吹く、まっっったくできない!!!音にもならないよくわからない音しかでない!!!他の人はどんどん音を出せているのに………なぜ………!焦る!エレクトーンにしろピアノにしろ、そもそも出したい音が出ないなんていうことが有り得ないので、音を出す段階からむずかしいことがあるという世界を知った。まともに音も出てないままミッキーマウスマーチのレッスンが始まってしまった。トランペットにおける「ド」は鍵盤楽器でいう「シ♭」ということをはじめて知り、一体いま出す必要のある音がなんなのかもわからなくてしばらくパニックだった。譜面に書いてあるのは「ド」、だけど今出すべき音は「シ♭」………!エレクトーンやってるし、音楽にはそれなりに触れてきているはずだけど、はじめて吹くトランペットの前では全く役に立たなかった。寧ろ知ってるが故の弊害すらも感じた。だけど、曲が始まるとこの音を出したい!という気持ちが出てくるのか、初めの頃より徐々に音が出せるようになってきた。すごい。はじめて触る楽器でも簡単な音だったら2〜3時間で出せるものなんだな………!そして唇がめちゃくちゃ痛い。

あっという間にリハーサルで、300人の吹奏楽経験者の方々がいる部屋に移動した。既にリハーサルが始まっていたので、部屋に近づくにつれて演奏が聴こえてきていて、どきどきした。初心者コースは初心者コースで固まって座り、経験者の方々が吹いてるのをめちゃくちゃ近くで聞いていたのだけど、やっぱり人数が多いので迫力もすごかった。そして指揮者の先生の指揮!!!!昔から指揮をする人にめちゃくちゃ憧れていて、今回の先生も身軽で楽しそうでとってもよかった。ずっと先生の方を見つめてしまった。経験者コースの方々はあらかじめ曲目が指定されているので、各自で練習をして、当日に初めて集まって、リハーサルで指揮者の先生に指導をしてもらって、本番を迎えることになっている。指揮者の先生が「今日はみなさんのデビューライブ且つ解散ライブとなります」とお話しされていてまさに!!!と思った。今日一日、音楽のために集まったひとたちで、この人たちで集まることはもう二度となくて、坂本真綾ちゃんの新しいアルバムのタイトル、「今日だけの音楽」がぴったりだなあと思った。経験者の方は何曲も吹くけど、初心者コースは1曲だけで、だけど、「今日だけの音楽」に少しでも加われるのがうれしかった。ハンドクラップをする場面もあったんだけど、ハンドクラップも充分過ぎるくらい音楽の一部なんだな、と思った。

本番はお客さんもたくさん入ってきて(おそらく参加者の家族がほとんどだとは思うけれど)、アナウンサーの方が司会をされて、指揮者の方がいろんなお話をされるコンサート形式で、自分の番以外はずっと観客だったし、観客にも演者にもなれるのがよかった。リハーサルのときには席に座っていなかった翼をくださいで歌ったのめっちゃ気持ちよかったな〜好きな曲だな〜!吹奏楽では有名らしいけど全然知らなかった宝島も聴けてよかったなあ。ほんとに行ってよかったなあ、と思う一日でした。

 

この日のことを思い返してみると、トランペットの音を出すには、私が積み重ねてきた経験も肩書きもなにも必要ないというかそもそも生きてすらこなくて、ただただ「わたし」がトランペットに向き合っているだけでよかったし、それがとても心地よかった。期待してないしされてないのがよい、みたいな。ライブを見ている時も、こんな気持ちになる。ただそこにいるだけでいいというか。音楽は家庭にいるときの私や仕事のときの私、いろんな私から解放してわたしに戻してくれるものだったんだな、と思った。そしてこの日に読んだ「さいはての彼女」がまさに自分へと戻っていくための旅のお話で、大切な本がまた一冊増えたな、と思った。